今でこそ、温泉の専門家としてこうして記事を書いている私ですが、温泉はどれも同じだと思っていた頃がありました。
そのくせ旅行などで色付きの温泉に入ると、普段のお風呂と違う色に喜んでいました。
特に今はなくなった赤い入浴剤で、お風呂に入れると白くなるタイプのものは大好きでした。
あせもに効果が期待できて、軽い硫黄の香りがあったあの入浴剤です。
私たち世代の人は、結構知っていますね(笑)
そんな私が温泉の専門家になり、白い温泉は【硫黄泉】の可能性が高いということがわかった頃、黒い温泉と出会いました。
初めて入浴した時は、本当に衝撃でした。
そういう温泉があるということは聞いていましたが、まさか【大分県】の大分市にあるとは思ってもいませんでした。
ASUKAちゃんが住んでるのは別府市だから、お隣の市だものね。
月日は流れ、大分県だけではなく九州のいろいろな温泉を巡るうち、私が一番好きな泉質は【モール泉】かもしれないと思うようになりました。
気が付けば、週に4~5日は【モール泉】に入っていることもあります。
以前ご紹介した【宇戸の庄】も【モール泉】ですね。
ところで、【モール泉】とは、どんな泉質なのですか?
【療養泉】の中にも入ってなかったようですし。
実は【火山性温泉】と【非火山性温泉】の紹介で、ざっくり説明しましたが、【モール泉】は【深層地下水型】と呼ばれるもので、ナトリウムー炭酸水素塩泉になることが多いです。
なるほど。
ということで【モール泉】は、【療養泉】の【炭酸水素塩泉】なのですね。
色が黒い【炭酸水素塩泉】でしたか。
めでたしめでたし。
読んでいただきありがとうございました。
また次回記事でお会いしましょう。
…………というわけにはいかないのが、温泉の面白さです。
本記事では、温泉の専門家である私が、【モール泉】について詳しく説明させていただきます。
ただ黒くて【炭酸水素塩泉】だけが【モール泉】ではありません。
黒い温泉を訪問した際に、本記事を少しでも思い出していただけたら幸いです。
※泉質名の文字色が違う部分に、こっそりとリンクを貼り付けています。
泉質を詳しく知りたいという方は、ぜひどうぞ。
【モール泉】とはその1.
必ずしも黒いというわけではない!
黒い温泉というイメージが強い【モール泉】です。
実は黒いだけではありません。
【モール泉】は、そもそもどうやってできたのでしょうか。
堆積された木や葉っぱなどが地層にたまり、地下水と混ざって温められてできたのが【モール泉】です。
何万年という期間です。
特に木などは、もう少し熟成されたら石油になるんじゃないかというくらいまで熟成されます。
【モール泉】に木の香りがあるのはそのためです。
しかし、地中というものは、何が起こるかわかりません。
最初は真っ黒だった【モール泉】も、染み込んできた雨水や地下に眠っていた地下水と出会うこともあります。
そもそも、最初に熟成されるのが木だけではありません。
落ち葉などは、金色の絨毯といわれるほど黄色がかっていることもあります。
つまり、【モール泉】は、地下で行われている出会いにより、さまざまな色に変化します。
私が訪問した【モール泉】は、黒や茶色はもちろん、金色や緑がかって見えるものもありました。
【モール泉】とはその2.
必ず【炭酸水素塩泉】というわけではない!
【火山性温泉】と【非火山性温泉】の記事で、【深層地下水型】は【ナトリウムー炭酸水素塩泉】になるという説明をしました。
しかし、【モール泉】が必ず【深層地下水型】になるとはかぎりません。
例えば佐賀県の唐津市に行くと、海岸沿いに松の木が植えられている場所があります。
このような木は、防風林と呼ばれています。
防風林に限らず、海辺に森がある場所は珍しくありません。
もしそこに、巨大な津波と土砂が流れてきて全部埋まってしまった場合どうなるでしょうか。
単純な話ですが、木と海水が混ざった水が地中に埋まることになりますね。
このような状態で何万年も経過すると、色は【モール泉】なのに泉質は【塩化物泉】ということもあります。
さらにそこに硫黄や鉄分が含まれていたら、その成分が含まれても不思議ではありませんよね。
もともと【炭酸水素塩泉】の【モール泉】があって、そこに他の泉質が流れ込んで色だけが残ったという可能性もあります。
いろいろ考えていると、本当にややこしいですよね。
【モール泉】とはその3.
温泉の中でも特に貴重な有限資源!
温泉自体、貴重な有限資源です。
【モール泉】は、特に貴重な有限資源と言っても過言ではありません。
【火山性温泉】の場合、空から降ってきた雨が地面に染み込み、温泉として湧きだすまで約50年かかると言われています。
今、入浴している【火山性温泉】は、50年前に降った雨だと思うと、何とも言えない気分になりませんか。
それでASUKAちゃん、露天風呂で雨が降ると濡れながら喜んでるのね(笑)
【モール泉】の場合は、何万年単位でそれが行われています。
逆に言えば、何万年前に堆積した温泉がなくなってしまったら、もう出てこなくなるか薄い温泉になってしまう可能性があるということです。
【火山性温泉】ですら、堀り過ぎて出なくなることがあります。
その何十倍もの年月がかかっている【モール泉】です。
【モール泉】に入浴する機会があれば、貴重な泉質なのだということを少しでも思い出してくださいね。
貴重な【モール泉】は大分県に多い!
いかがでしたか。
【非火山性温泉】の1つである【モール泉】について書かせていただきました。
私が住む【大分県】には、【モール泉】がたくさんあります。
有名なのは大分市や中津市の耶馬渓などです。
一目八景で有名な耶馬渓の【モール泉】は、自然を堪能しながら入浴できるので大好きです。
大分県に温泉旅行を考えている方には、耶馬渓がおすすめです。
もちろん、JR大分駅から近い大分市内の【モール泉】もおすすめです。
こういう時に、どこが良いと優劣をつけがたいのが、私の温泉の専門家の悩みです(笑)
本当にどの温泉も、それぞれ個性があって素晴らしいです。
それでは、「非火山性温泉の1つ【モール泉】はどんな泉質?【療養泉】との違いはあるか」の記事をここまで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。